物忘れ・認知症について

物忘れが気になり始めたら
年齢を重ねるごとに、記憶力や認知力が低下することは誰にでも起こります。しかし、それが単なる老化ではなく、認知症疾患によるものかもしれません。認知症疾患には早期であれば治療によって能力の改善が期待できる疾患もあり、そうでなくとも機能の低下を遅らせるよう試みる価値があります。正確な認知症疾患の診断は専門医による検査・診察が必要です。当院では、物忘れや認知症が気になるかたを対象とした専門外来を行っています。気になる症状があるかたは一度ご受診ください。
ほとんどの場合、早期であるほど治療には選択肢があります。気づかれたときには早めのご相談をおすすめしております。
こんな場合はご相談ください
- 今日の日付や人の名前がすぐ出ない
- 外出する機会が減った
- 人と会う約束や日時を忘れてしまう
- 今までできたことができない
- 水道やガス栓の閉め忘れが目立つ
- お金の計算ができなくなった
- おしゃれや入浴に興味がなくなった
- 家の中が物であふれている
当院の物忘れ専門外来
略歴
- 名古屋市立大学 医学部卒業
- 藤田医科大学大学院 放射線医学教室 博士
- 現在 国立長寿医療研究センター
ものわすれ科 外来医師
資格
- 精神科専門医制度指導医
- 臨床研修指導医
- 愛知県難病指定医

信頼できる診断のための精密な検査
当院の物忘れ外来では患者さんやご家族のかたから十分にお話を伺い、神経診察を行います。見立てに応じた必要な検査を提供し、認知症の原因疾患の診断に努めます。診断に必要な各種検査は、当院で実施するほか、必要に応じて国立長寿医療研究センターなどと連携し、高度な検査を委託することも可能です。
また、今後は血液バイオマーカーなど、先端の先進検査も委託して行えるよう準備を進めており、より正確で効果的な診断と治療を提供できる体制を整えております。安心して診察を受けていただける環境を整え、認知症疾患の早期発見・治療に努めてまいります。

その人らしい生活を目指し
治療を提案します
認知症の治療は、原因疾患により大きく異なります。治療によって大幅な改善が期待できる場合もあれば、長期的に付き合っていく必要がある場合もあります。当院では、一般的な薬物療法に加え、デイケアを通じたリハビリも提供し、日常生活の質を向上させるサポートを行っています。
さらに、国立長寿医療研究センターとの連携病院として、疾患修飾薬の治療や先進的な治療研究への参加をサポートすることで、先端の治療選択肢を患者さんにご提案しています。患者さん一人ひとりの状況に合わせた適切な治療戦略を共に考え、安心して治療を続けていただけるよう努めてまいります。
受診のご案内
ご予約
お電話にてご予約をしていただきます。患者さんの症状やお悩みについてお伺いさせていただきます。内容に応じて適切な外来のご予約をとらせていただきます。
物忘れ外来受診の際のお願い
ご本人様からだけではなく、患者さんの普段の状態をご存じのかたからも時間をかけてお話を伺います。「ご本人の普段の様子をご存じのかた」と一緒に受診してください。どうしても当日の付き添いが難しい場合はご本人の状況がわかるメモなどをご準備ください。
また、現在のおからだの状態を把握するため、お薬手帳などの治療状況がわかるものをお持ちください。かかりつけ医療機関がある場合はそちらの紹介状をお持ちください。
そのほかの一般的な初診の際のお願いについては、別途初診のご案内をご一読ください。
認知症の種類
アルツハイマー型認知症
認知症のなかで最も頻度の高いタイプです。長い年月をかけて脳の機能低下が徐々に進行し、記憶や認識に関する障害がみられます。最近では初期に治療を実施することで脳の変化を遅らせる治療薬が開始され、有名になりました。進行してからは適応にならないため、物忘れが気になりはじめた段階で検査を受ける必要があります。日常生活で気になる場面が増えたら、一度ご相談ください。
レビー小体型認知症
レビー小体という異常が脳をはじめ、全身の神経に影響を与えるタイプの認知症です。特に曇りの日や夜に存在しない人や動物が見えるという幻覚(幻視)が有名ですが、そのほかにも昼夜の逆転、体の動かしにくさや、睡眠中の寝言、立ちくらみや頻尿といった全身のさまざまな神経の症状を呈することがあります。症状は変動しやすく、また感情的な異常も出現しやすいタイプです。治療薬によってそれぞれの症状の緩和が期待できます。
血管性認知症
脳血管の障害による出血や虚血が、脳にダメージを与えることで生じる認知症です。血管の障害が問題になるため、進行の仕方や症状の出方は個人差が大きいタイプになります。脳血管の障害を遅らせる治療が重要ですが、とりわけ症状の変動の強さや、怒りっぽさが生活の支障になることが多く、そういった症状に対する専門的な治療を必要とすることがあります。
前頭側頭型認知症
物忘れよりも行動の異常が目立つタイプの認知症です。性格の変化、思いついたことをすぐにしてしまう衝動性、信号無視や万引きといった社会的な行動の異常が有名です。原因となる神経の異常は比較的多くありますが、脳の一部である前頭葉または側頭葉の障害によって出現するものは前頭側頭変性症といい、難病に指定されています(指定難病127)。
失語症
言葉が出にくい、うまくしゃべることができないという症状を失語といいます。失語そのものは認知症ではありませんが、原因となっている脳の変化はゆくゆく進行することで認知症になりやすいため、認知症専門医が最初に診察を行うことが多くあります。原因となる疾患はさまざまですが、言葉が出にくい、単語の意味がわからないといった症状は認知症の初期の症状の可能性があります。一度専門医にご相談ください。
治療の効果が期待できる
認知症をご存知でしょうか
一見認知症にみえる状態においても、状態を改善させることが可能な状態があります。
特発性正常圧水頭症や慢性硬膜下血種、薬剤性によるもの、うつ病、ビタミンやホルモン不足、脳炎、甲状腺機能低下症などによる脳機能の低下は、一見すると認知症にみえますが、早期発見・治療によって状態の改善が期待できます。
しかし、認知症の原因は簡単には判断できないため、以前とは違う物忘れやなにかしらの症状がみられた場合には、一度受診されることをおすすめします。