初老期からの精神医療について

初老期からのこころの病に対する
専門的アプローチ
当院では精神医療のなかでも、特に中年期から初老期以降の患者さんの治療を外来・入院とも積極的に引き受けております。
この年代で生じるこころの症状は、青年期とは異なる精神疾患であることが多く、また認知症をはじめとする神経疾患に起因することもあります。さらにはからだの問題にも配慮する必要があり、一般精神科領域にとどまらない幅広い医療知識が求められます。

当院は精神科専門医資格に加えて内科認定資格や、認知症専門資格を有する医師が対応することで、複雑な病態に対して適切な治療を提供します。また、認知症の心配や、その種類の診断については専門外来を提供しております。
ご本人に自覚がなくても、ご家族が症状でお困りになるケースもあります。患者さんやご家族のかたの状況を考慮し、一人ひとりに合わせた治療や支援サービスをご提案いたします。お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
こんな場合はご相談ください
- 気分の落ち込みが続いている
- 原因不明の体調不良や痛み
- 眠れない
- 被害的な妄想を話す
- イライラ、怒りっぽい
- 幻覚が見えることがある
- いつもそわそわと落ち着かない
- 忘れっぽい
診療のご紹介

丁寧な診察と、豊富な検査
診察において患者さん一人ひとりに寄り添い、丁寧な問診を通じて、症状や生活背景をしっかりと把握します。併せて身体・神経診察を行い、あらゆる側面から患者さんの状態を評価します。
さらに、院内CT検査だけでなく、脳波、MRI検査や核医学検査といった豊富な検査を組み合わせることで、診断の精度を高めています。経験豊富なスタッフが専門的な診察と検査を提供し、患者さんとそのご家族に安心して治療を受けていただける環境を整えています。
診療内容
薬物療法

中年期以降に初めて出現した精神症状は、神経活動の異常によって生じていることが多く、薬剤による治療が必要となることがあります。詳細な問診と検査のもと、治療方針をお伝えし、必要性と安全性を考慮して薬物療法を提案させていただきます。また、他院での処方についてのご不安などもご相談に応じます。
行動分析・生活療法

とりわけ老年期における精神症状の一部は、生活や人間関係といった環境によって誘発されたり、増強されたりすることがあります。患者さん一人ひとりの生活環境や行動様式、家族とのコミュニケーションにおける問題を分析し、改善策を提案することで症状の緩和を図ります。
機能評価(神経心理検査)

脳機能の状態を正確に把握するため、神経心理検査を用いた機能評価を行っています。これは、記憶力や判断力、注意力などの脳の働きを詳しく評価し、認知症やその他の精神疾患の診断や治療方針の決定に役立てる検査です。検査結果をもとに、患者さん一人ひとりに適切な治療計画を立て、進行状況をモニタリングしながら適切なケアを提供します。
脳画像検査

当院では、症状を詳細に評価するだけでなく、脳梗塞や認知症を含む神経疾患との関連の有無を確認するため、脳画像検査を積極的に活用しています。院内においてはCT検査を実施し、さらに必要に応じて国立長寿医療研究センターと連携し、先端のMRI検査や核医学検査を委託実施します。これにより正確な診断と治療計画の策定を可能にしています。
介護相談(生活環境整備)

当院ではご家族や介護者のかたと連携し、より快適で安心できる生活環境を整えるサポートを行っています。具体的には、適切な介護方法や家庭内での環境調整についてアドバイスを行うとともに、介護保険利用などの支援サービスをご案内します。さらに必要に応じて訪問看護や通所サービスとして送迎付きデイケアを提供することで、介護保険では不足しがちな生活支援を拡充します。生活の安定はご本人だけでなくご家族のゆとりとなり、さらに認知症や精神症状を緩和することが期待されます。
代表的な疾患
認知症疾患
認知症は、神経の障害によって記憶力や判断力、思考力が衰えた状態のことです。主にアルツハイマー病やレビー小体病、無自覚の脳梗塞が原因です。認知症の状態になる前に見つけ、進行を遅らせることが重要です。原因の病気によって対応が異なるため、特に診断をご希望される場合には専門外来での検査をおすすめします。
睡眠障害
加齢とともに睡眠は安定しなくなります。十分な睡眠が得られない状態が続くと、高血圧などの生活習慣病の悪化、うつ病などの精神疾患の危険性、また認知症になる可能性が高まります。睡眠を悪化させている原因を取り除き、必要に応じて治療を受けて十分な睡眠を確保することが重要です。
うつ病
うつ病は、持続的な気分の落ち込みや興味・関心の低下が特徴の精神疾患です。しかし、老年期においては気持ちの落ち込みがはっきりしないかわりに体の不調感や痛みであったり、理由のない不安や焦りといった症状を呈することがあります。診断には十分な経験のある医師の診察を受けることが重要です。特に、体の違和感が続き、からだの検査を受けても異常がないといわれてお困りなら一度当院にご相談ください。
不安障害
強い不安や恐怖心から、日常生活に困難をきたす状態のことです。不安障害にはいくつかの種類があり、強い不安と身体症状を呈するパニック障害や、人前に出ることに不安を感じる社交不安障害、不安感がコントロールできず社会生活が送れなくなる全般性不安障害など、さまざまです。初老期においては原因となる病気が潜んでいる可能性が高く、慎重な診察のうえで適切な診断・治療を行います。
幻覚症
存在しないものが見える(幻視)や、声が聞こえてくる(幻聴)といった症状があります。この病名そのものは認知症疾患の症状の一部や、精神疾患の症状を含む、幅広い考え方です。実際の治療は原因となっている病気にあわせて治療を実施します。
妄想性障害
誤った事実が真実だと思い込む病気です。妄想の内容は、現実的なものから非現実的なものまでさまざまで、ご本人よりもご家族のかたが困ってしまうことも多くあります。成人期においてはいわゆる精神疾患であることが多いですが、初老期においては神経疾患や脳の電気的な異常によってもたらされることもあり、神経医学・精神医学の両面から診察し、適切に治療する必要があります。十分に経験のある医師の診察を受けることをおすすめします。